第51章 ピックアップ御礼作品【月夜に抱かれて】/秀吉
……愛香が拗ねている。
俺にどんぐりを投げつけて、あっかんべーをして立ち去っていく愛香の後ろ姿を俺は口元を手で覆いながら見つめていた。
そうしないとだらしなく弛んだ顔を誰かまわずに晒す事になっちまう。
(拗ねて怒る愛香が可愛いくてしょうがねぇなんて俺も馬鹿だなとは思うが)
「秀吉様……?」
「どうかなさったんですか?なんだか嬉しそうですわよ」
「私と一緒にいるから?」
「なにを言ってるの?!私に決まってるじゃない」
「あら!私よ!」
口々に喋る女たちに
「悪いな。急用ができた」
と告げると蜂の巣をつついたように騒ぎはじめる。
「えー?!秀吉様とお月見がしたかったわ」
「つまらないじゃない」
「お前達の相手はあいつらがしてくれるから、今宵は勘弁してくれ」
「あら?!政宗様がいるじゃない!」
「石田様もいらっしゃるわ」
「明智様……!いつ見ても麗しいわね」
目標を俺から政宗たちに切り替えた姫君たちは、われ先にと言わんばかりに政宗たちに駆け寄っていく。
「さて……」
俺は拗ねている愛香のご機嫌とりにでもいくか。