第49章 ピックアップ御礼作品【月夜に抱かれて】/光秀
「酔っているお前は何とも言えない色香を放つ──見ているぶんには面白いが」
「もう……!そんな事ないです」
照れ笑いをする愛香も悪くはないが
「今宵はいつもと違う顔が見たい……」
「……光秀さん」
「それとも───俺に酔ってみるか?」
「っ……!
(ただ見つめられているだけなのに、まるで全身を愛撫されているみたいに頭が惚けてくる……)」
潤んだ瞳が俺の心を鷲掴みにして放さない。
自分でもわからないくらいに愛香に溺れている。
溺れる……?
いや、少し違うな。
俺と愛香は、生まれた時代も育った環境も違う。故に物の考え方が違う。
俺から見たら愛香は馬鹿がつくくらいの正直者で他人を疑う事をしない。
そんな人間は、この乱世の世を生きてはいけないであろう。
だが、愛香は何度言っても信念を曲げない
『私は他人を疑うのは嫌なんです。だったら信じて裏切られた方がいいんです』
『その先に自分の死があってもか?』
『はい。それでも私は後悔はしませんよ』
そう言い切った愛香の瞳がまっすぐと俺の心を射抜いた。
信長様の下で血生臭い策略を担当する俺を否定をし、そして肯定されたかのような気がした。
愛香が傍にいれば───
俺は誇りを持って他人を欺く事が出来る
すべては信長様の御為に───
秀吉が信長様のために命を賭すならば、俺は信長様のために敵も味方であっても欺こう
が、愛香
お前だけは欺く事はしない
俺が素直でいるのは愛香の前だけだ。