第48章 ピックアップ御礼作品【月夜に抱かれて】/幸村
「嘘じゃねーかんな!」
「信玄様のおともで色っぽいお姉ちゃんと仲良くしてたんでしょ」
「してねーよ!」
「ふーん」
幸村が嘘を言っていないのが私にはわかった。
わかったけど───面白くはない。
女の扱いに不慣れな幸村が自ら女をほいほいと抱くわけないのはわかっている。
きっと、この白粉の匂いも相手から抱きつかれてついてしまったんでしょ。
(たぶん、信玄様の馴染みの店かなんかに無理矢理引っ張られて行ったんでしょうけど)
「お前さ──」
「なに?」
「やきもち妬いてんの?」
「な、なによ……!」
「そうなのか?」
そうなのかって何で嬉しそうに言ってんの?!
「そうか、そうか」
「むう!───なんで頭を撫でてるのよ?」
「やきもち妬くなんてお前も可愛いな」
「っ……!」
なによ、その言い方
普段は可愛いなんて一言だって言ってくれないくせに、こんな時ばっかりずるいよ。
満足そうに笑いながら頭を撫でるなんて
(文句が言えなくなるでしょ)
幸村が頭を撫でてくれるだけで嬉しくて、顔がほころんじゃいそうになる。
それを隠すように私の口からは憎まれ口が出てしまうけど幸村は一向に耳を傾けようとしない。
それどころか
「安心しろ、愛香」
「なにが?」
「俺は惚れた女以外は抱かない」
真摯な幸村の言葉に胸が一気に熱くなってしまう。