第48章 ピックアップ御礼作品【月夜に抱かれて】/幸村
「幸村……?」
「なんだよ?」
幸村の顔をガン見しつつ鼻をくんくんとさせて、匂いを確認する。
「な、なんだよ」
「むう!……やっぱり!」
「は?」
私が気付かないとでも思ったの?
残念だけど私の鼻は警察犬並みに精度がいいんだからね。
「幸村……だれと浮気してきたの?」
「はあ?」
目をまんまるにして素っ頓狂な声をだす幸村。
私が浮気に気付かないとでも思ったの?
残念でした
お酒の匂いと微かに残っている白粉の匂いを私が見過ごすわけないじゃない。
「隠しても無駄だからね。ちゃんと証拠は押さえてあるから」
「浮気なんかしてねーよ」
「嘘をついてもだめ!」
「嘘じゃねーよ」
「じゃあどうして幸村から白粉の匂いがするのよ」
「……おしろい?」
幸村は私から少し離れて腕の辺りをくんくんと匂いを嗅いでいるけど首を傾げて
「匂うか?……わかんねーけど」
「白粉の匂いが残ってもん!どこのお姉ちゃんと浮気したの?!」
本当は胸ぐらを掴んで問い詰めたいのを堪えて、腕組みをして幸村を睨みつける私。
まさか、幸村が浮気をするとは思っていなかった。
「あ!あの時の……だな」
「あの時って?」
どんな言い訳をするつもり?
ちゃんと聞いてあげるから言ってみなさいよ。
「ここに来る前に信玄様のおともでちょっと出かけてた」
「ふーん……」
「なんだよ!──その疑いの眼差しは」
「……信玄様のおとも……ねぇ」