第48章 ピックアップ御礼作品【月夜に抱かれて】/幸村
「今も昔も変わらずお月様はお月様のままだよね」
秋の夜長、虫の鳴き声に耳を傾けながら夜空にぽっかりと浮かぶお月様を見上げている私。
なかなか風流だなって思う。
現代にいたら毎日がもの凄く忙しくて、のんびりとお月様なんて見ている余裕がなかったと思う。
でも、この時代に来て特にやる事もない私はこうやってお月見をする余裕もある。
この時代にタイムスリップしてきた時は、本当に嫌で嫌で毎晩泣きながら眠っていたっけ。
今までの私の暮らしからは一変して、不便だし当たり前のような平和もないこの時代。
早く帰りたくて毎日ため息ばかりついていたな。
それが今では自分の意思でこの時代に残る事を決めたなんて自分でもびっくりしてしまう。
私には好きな人ができたから──
最初はデリカシーのない男って思っていた。
彼──幸村を知れば知るほど好きになっていく自分がいて、いつの間にか離れられなくなるくらいに好きになってしまっていたんだよね。
幸村が傍にいてくれたから私はこの不便な暮らしにも順応できたし、何より今はその暮らしでさえ楽しめる事が出来ている。
愛する幸村のためにこの時代に残った私って
「健気な女かも……」
「だれが健気だって?」
不意に背中にぬくもりと彼の香り……?
ん?
んん??