第45章 ピックアップ御礼作品【月夜に抱かれて】/家康
愛香と縁側に座って月見をはじめてすぐ、愛香の様子がおかしい事に気付いた。
妙にそわそわとして落ち着きがない、やたらと口数が多い
(口数が多いのはいつもの事か……)
突然、月に兎がいて餅つきをしていると言い出した時には吃驚して見つめてしまったくらい。
どこをどう見ても兎がいるようには見えないし、ましてや餅つきをしているようには見えない。
そんな俺に懸命に手振りを使って説明をしている愛香が、可愛くてたまらない。
つい、月ではなくて愛香の横顔ばかり見てしまう。
俺に見られている事に気づいた愛香は頬を染め、目を泳がせはじめた。
ねぇ、俺の事を煽っているの?
じりじりと何かに追い立てられているような気がして落ち着かない。
愛香をこの腕に閉じ込めて想いのままに抱いたら、楽になるのだろうか?
余裕がない自分が嫌で、でも__
愛香にはそれを悟られたくないから、俺は余裕があるように見せかけるんだ。
「……はしゃぎすぎじゃない?」
「だって……」
「だって……なに?」
「だから……」
「だから……なに?」
言葉に詰まった愛香は俯いてしまう。
「愛香……?」
「……家康ったら……意地悪すぎだよ」
「え……?」
意地悪をした覚えはないんだけど
「いつもより何倍も格好いいし、雰囲気もいつもより優しいし……!」
「……なに言ってるの?」
「もう……胸が張り裂けそうになるくらいにどきどきして……死にそう……」
涙目になりながら訴えてくる愛香を無意識に腕の中に閉じ込めてしまった
(可愛いすぎ……)