第45章 ピックアップ御礼作品【月夜に抱かれて】/家康
『家康、今宵は見事な月が見れるぞ』
『だから何ですか?』
まるでとっておきの情報だと言わんばかりの政宗さんの態度がよく分からない。
『お前な……これを好機とせずにいつを好機とするんだ?』
『……意味がわかりません』
『ったく……しょうがねえ奴だ』
呆れたような物言いになんだか苛ついてしまう。
何となく察しはついている。
お節介やきの政宗さんのことだから愛香との関係を言っているんだろうけど。
『早く物にしちまえよ』
(やっぱり……)
『……他に言い方はないんですか?』
『ねえな。惚れているならさっさと自分の女にしろ。
じゃねぇと____俺がさらうぞ』
『そんな事はさせませんから』
冗談交じりな言い方をしても俺にはわかる。
政宗さんは本気だ。
想いが通じあって半月。
俺と愛香は時折、口吻を交わす間柄。
それ以上は進んでいない。
愛香を抱きたいという欲求は勿論ある。
が、俺には愛香を抱く事が出来ない。
素直で明るい愛香は、天の邪鬼で捻くれている俺にはとても眩しい存在。
そんな愛香を俺の物にしていいのだろうか……そう考えると口吻より先に進む事が出来ない。
本音を言えば抱きたいに決まっている。
後一歩を踏み出す事の出来ない俺。
___でも、月の下ならその一歩が踏み出せるのだろうか?