第42章 堕ちていく恋心/明智光秀◇(光秀side)其の3
あれから愛香と安土城に戻った俺は、御館様への報告のために天守へと向かっていた。
「おや? どうした?」
行く手を阻むように仁王立ちをしている秀吉は、般若の如く怒っているようだ。
また、例のごとく小言が始まるのか?
誰にも告げずに敵の隠れ家に行き、捕まったふりをして情報収集をした事に対してものを申したいのか?
まったく小五月蝿い
「小言なら後にしてもらおうか
今は、御館様への報告が先だ」
秀吉の肩を軽く押して通り過ぎようとすると、肩を掴まれ頬に激しい痛みがはしった
「っ……いきなりだな」
「愛香を泣かせるな!!」
愛香……?
コイツは愛香の事で怒っていると言うのか?
「秀吉には関係あるまい」
「関係あるから言っている。愛香は、大事な俺の妹分だ」
「妹か……」
鼻で笑ってしまうな
妹分と思っているのはお前だけであろう
「なに笑っていやがる?」
「いや、めでたい奴だと思ってな」
「誰がめでたいだって?」
「お前だ、秀吉。
愛香の気持ちに気付いてやる事もなく呑気に兄気取りとはな」
いつも以上に辛辣な言い方になってしまうが、仕方あるまい
俺とて人間だ
時には感情的になるときだってある。
どうしようもないくらいに愛香の心を欲している俺は、秀吉が憎らしいとさえ思ってしまう。
「めでたいのはお前だ、光秀」
「この俺が?」
秀吉が怒りを露わにして俺を睨みつけるのは日常茶飯事だ。
が、今日の秀吉はいつもと違う
「お前こそ愛香の本当の気持ちに気付いていない。いや、気付いてやろうとしてないのか?」
「意味がわからん」
「愛香の心には光秀__
お前しかいないだろ」
「……」
何を言ってるんだ?
愛香の心に俺がいるだと?