第42章 堕ちていく恋心/明智光秀◇(光秀side)其の3
「愛香を信じてやれよ、あいつの心にはお前しかいないんだぞ。光秀がいなくなったと聞いた時の愛香の顔__
あんな切なそうな女の顔をする愛香は初めて見た」
愛香が?
「光秀……愛香を幸せに出来ないなら別れろ」
「秀吉が指図する問題ではなかろう
これは俺と愛香の問題だ」
「俺は兄として愛香の幸せを願っている」
「……考えておく」
「光秀!!」
秀吉の怒鳴り声を背中で聞きながら俺は歩きだした。
「ふむ……」
恋心とは厄介なものだな
いや、俺の性格が厄介なのか?
人を疑うことには長けてはいるが、信じるということに関してはかなり劣っていると自覚をしている。
愛香の気持ちが信じられないのか__
問うと言葉は信じる事が出来ない
だから、躰で縛り付けようとした俺
しかし、それは間違いだと分かった
俺の無事な姿を見て安堵の涙を流した愛香の顔が脳裏をよぎる
愛香なら
違うな
愛香だけは信じられる
いや、信じたい
しかし、それを秀吉に諭されるとは不愉快なのだが……
一応、あのお節介焼きに感謝はしておいてやるか