第40章 素直になれなくて/織田信長
「愛香……」
「あ……」
腕を引き寄せられたと思った瞬間に体が浮いて__
「え?」
信長様に横抱きされているんだけど
「怒っている貴様の顔も悪くはないが……泣いて素直になる貴様の顔のが好ましい」
「……っ」
そんな……そんな甘い顔をして微笑まないでよ
心臓を鷲摑みされたみたいに苦しい
初めて恋に落ちた時みたいに
ううん__
それよりも切なくて胸が苦しいよ
好きで好きでたまらなくて
この腕の中に一生いたいって思うくらい
無理だってわかっているのに
いつかは信長様は、相応しい姫君を正室に迎える時がくるのに
頭ではわかっているのに気持ちがついていかない
「ごめんなさい」
「ん?」
「本当は……わかってるんだよ。信長様があの姫君を正室に迎えた方が良いって」
あ……
信長様の表情が強張ってきている
でも、ちゃんと言わなくっちゃ
「夜伽の邪魔をしちゃいけない事も……信長様にとってあの姫君は大事な方だって……わかってるんだけど……」
「貴様は阿呆か?」
「っ!」
頬を引っ張っられて痛い
「っ……っ! いたっ……痛いって」
「この口が阿呆な事を言っているのか?」
手加減無しで引っ張っられて痛いんだって
お願いだから離してよ
「この俺があんな大名如きの力に頼るわけなかろう」
「でもっ……」
「和平が出来なければ力づくで従わせれば良い。
貴様があれこれと考える事はない」
「でもっ!」
「うるさい口は塞ぐ」
「ンッ……」
荒々しいけど愛情たっぷりな口付けに何も言えなくなっちゃう