第40章 素直になれなくて/織田信長
信長様……
きっと怒っているだろうな
私が夜伽を断ったから
きっとあの姫君を夜伽に所望するんだよね
「ふっ……っ」
涙がこぼれて止まらない。
手で口を覆っていないと大きな声をあげてしまいたくなる。
信長様があの姫君を抱く__
毎晩、私を酔わせてくれた手があの姫君に触れるの?
逞しい胸に私が顔を埋めたように、あの姫君も顔を埋めるの?
低い甘い声であの姫君にも愛を囁くの?
「そんなの……そんなの嫌っ……!」
耐えられない!
私を愛してくれた腕の中に他の女を入れないで
信長様が他の女を抱くのを想像しただけで気が狂いそうになる。
息も出来ないくらいに胸が痛い。
「……だめっ」
溢れでる涙を拭いながら信長様の後を追いかける。
「待って!! 信長様っ!!」
遠くに見える信長様の背中に駈け寄りしがみつく。
「だめっ!!」
「何がだ?」
「私以外の女を抱かないで!!」
我が儘だってわかってるよ
自分勝手な想いを押し付けてるのだってわかってる
でも、それでもイヤなんだもん
信長様が私以外の女と愛し合うなんて!!
「……お願いだから」
「ようやく素直になったか」
「え……?」
背中から回していた手に重なる信長様の大きな手
その手のぬくもりが愛おしい。