第38章 俺様に薬を飲ませるための代償/織田信長
「は? 何を言っている?」
思いっきり上から見下している視線が、ちくちくと突き刺さる。
「ですから、風邪をひいていますよね?」
「この俺が風邪をひくと思うか?」
案の定、信長様は風邪をひいていると認めてはくれない。まずは、風邪をひいているのを認めてもらわないと薬だって飲んでくれないよね
「見るからに風邪をひいているように見えますよ」
「貴様の目が腐っている……っ……ごほっ」
「今! 咳をしましたよね?」
「……していない」
「ごほって言いましたよね?!」
「勘違いであろう」
咳をしたのを認めたくない信長様は、顔を背けてしまった。
(駄々をこねてる子どもみたい)
「どうしても風邪をひいたって認める気はないと?」
「認めるも何も風邪をひいていないのだから認める以前の問題であろう」
「そもそも風邪をひくなど軟弱な身体ではない」
「生まれてから一度も風邪などひいたことはない」
風邪を認めたくない信長様の言い訳に言葉もでない。
でもここで引き下がってしまっては、光秀さんの嫌味な小言が私を待ち受けているのは確実。
「わかりました」
「やっと理解したか」
「信長様は風邪をひいていません」
「当然だ」
「では、この薬を飲んで下さい」
「なにゆえに?」
「これは風邪を予防する薬です。風邪をひいていないのなら飲めますよね?」
まっすぐと信長様を見据える
(絶対に薬を飲んでもらわないと……)