第36章 気の向くままに/上杉謙信(謙信side)
「お願いっ!! 2人ともやめて!!」
「すぐに独眼竜を斬り伏せて春日山城に愛香を迎えてやる」
「そう簡単に愛香を行かせるかよ」
惚れた女の前で格好つけたいのか?
だが、残念だな独眼竜
貴様は不様な姿を愛香の前で晒す事になるぞ
柄を握る指に力を込め、独眼竜を見据えると
「はいはい謙信様、駄目ですよ」
緊迫した空気の中、とぼけたような声が響き渡った
「……佐助か」
生意気にも俺と独眼竜の前に立ちはだかるとは、なかなかやるな
「此処で諍いを起こさない約束でしたよね?」
「……そんな約束なぞした覚えなどないぞ」
「あらぬ方向を見て喋っても説得力にかけますよ__刀を収めて下さい」
「……つまらん」
久しぶりに血が滾ってきたというのに
「政宗も収めよ」
「ちっ……」
信長様一言で独眼竜も刀を収めたか
まあ、いずれ戦場にて決着をつけてやる。
それまでの愉しみにとっておくか
「さて……愛香」
「は、はいっ!!」
「謙信をもてなしてやれ」
「え?」
「貴様にわざわざ逢いに来たんだ。精一杯、もてなしてやるが良い__
まっ、貴様を謙信にやるつもりはないがな」
「欲しいものは力尽くで奪うだけだ」