第35章 気の向くままに/上杉謙信(夢主side)
「此処で諍いを起こさない約束でしたよね?」
「……そんな約束なぞした覚えなどないぞ」
「あらぬ方向を見て喋っても説得力にかけますよ__刀を収めて下さい」
「……つまらん」
渋々刀を収める謙信様は、ちょっと拗ねているみたいに見えて(なんだか、可愛い)
「政宗も収めよ」
「ちっ……」
信長様の一言で政宗さんも舌打ちをしながら刀を鞘に収めてくれた。
とりあえず流血沙汰は回避出来たみたいで、良かった。どちらが怪我をしても嫌だもの。
「さて……愛香」
「は、はいっ!!」
突然、信長様の低い声に心臓が跳ね上がってしまった。
信長様に叱られると思った私は、硬く目を閉じてしまう。
怖い……何を言われてしまうんだろう?
「謙信をもてなしてやれ」
「え?」
にわかに信長様の言葉の意味が信じられなくて、ガン見してしまった。
「貴様にわざわざ逢いに来たんだ。精一杯、もてなしてやるが良い__
まっ、貴様を謙信にやるつもりはないがな」
「欲しいものは力尽くで奪うだけだ」
不敵な笑みを浮かべる信長様と好戦的に信長様を見詰める謙信様
またも不穏な空気が……
謙信様に逢えて嬉しいんだけど、胃が痛くなりそう。