第35章 気の向くままに/上杉謙信(夢主side)
広間に入った瞬間にまばたきを何回もしてしまう。
「嘘……でしょう?」
「久方ぶりだな、愛香」
さっきまで逢いたいと思っていた人が私の目の前にいるなんて、嬉しくて頬が緩んでしまう。
「謙信様……」
「そなたを迎えに来た」
無表情ながらもどこか愉しそうに笑みが見え隠れする謙信様
「迎えに来た」という言葉に胸が締め付けられる。
「そう簡単に愛香を手放すわけねぇだろ?」
政宗さんの低い声が響き渡る。
その手には刀が握られ、謙信様に向いていた。
「ここで独眼竜を斬り伏せて愛香を春日山城に連れて行くのも一興だな」
謙信様の手にも愛刀が握られていて、光りを放っている。
「ほう……この俺に勝てるとでも?」
獲物を狩る獣のような鋭い瞳で謙信様を見据えている政宗さんは本気だ
な、なに?
何がどうなっているの?!
広間の中央に刀を構えて対峙している謙信様と政宗さん。
上座に座っている信長様は、いつものように不遜な笑みを浮かべて事の成り行きを見守っているみたいだし
秀吉さんは困ったような顔をして2人を見守っている。
これは……一体?
どうなってるの?