第35章 気の向くままに/上杉謙信(夢主side)
銀色に光り輝く月を見ていると無性にあの人に逢いたくなってしまう。
月のように冷たくて美しいあの人__
恋しいあの人を想い浮かべていると
「愛香様」
「三成くん……こんばんわ」
「愛香様は、いろんな殿方から好かれるんですね」
「え?」
縁側に座っていた私の隣りに片膝をつく三成くん。
いつものように穏やかな笑みを浮かべているんだけど言っている意味がわからない。
(三成くんって時々、突然と脈絡もない話をする時があるんだもん)
「何の事?」
「今、広間では愛香様を巡って凄絶な戦いが繰り広げられていますよ」
「ぷっ……何それっ」
大袈裟な言い方に声をあげて笑っていると
「……笑い事じゃないから」
憮然とした表情の家康さんがやって来た。
「あんたのせいで大変な事になってるんだから、早く場を治めてよ」
「え?」
「早く来て」
私の手首を掴むとさっさと歩き始める家康さん。
「まったくさ……三成も早く愛香を連れて来なくちゃいけないって分かってるくせに。なんで和んでるんだよ」
「すみません。愛香様があまりにも可愛いらしく笑っていたので見惚れてました」
「……可愛い?__大口を開けて笑ってただけでしょ」
……2人の会話に一喜一憂しながら、わけも分からずに広間へと向かう私。
一体、何が起こっているのかしら?