第34章 一夜の幻/顕如
「お嬢さんを穢すわけにはいかない」
「……私は穢れませんよ」
顕如の手を自分の頬にあて、微笑むその顔はまるで菩薩のよう
「私を抱いて生まれ変わって……」
「生まれ変わる?」
「生まれ変わって新しい人生をやり直しましょう」
「そんな事は……」
「それが生き残った者の務めです」
まるで菩薩様に諭されているようだ
本当に良いのだろうか?
俺は愛香を求めても
本当は狂おしいほどに愛香を求めていた。
あの時、山賊から愛香を守った時から惹かれていたのである。
でも、その想いを封印していた。
復讐に身を堕とした自分は女を、愛香を愛してはいけない。
でも、心の奥底では愛香を愛したかった。
自分自身の身体で愛したいと切望していたのだ。
「私の願いはただ1つ……顕如さんに愛されたいの」
顕如の返事を待たずに愛香は、瞳を閉じた。
微かにまつげが揺れ、唇が動く。
迷いながらも顕如は、愛香に顔を近付け軽く唇を合わせる。
それに応えるかのように、細い腕が顕如の首に巻き付き啄むように唇を吸っていく。
訪れた甘い痺れに抗う事が出来ない顕如は、自然の流れに任せ胸に触れる
「ンッ……」
吐息が耳を擽ると抑えていたものが噴き出していくようだ。
何も考えられずに目の前にいる愛香の事しか考えられない。
愛香を満足させたい
そう思ってしまうのは男の性__