第34章 一夜の幻/顕如
その日の夜
誰かを抱いているような気がして目が覚めた顕如。
腕の中には一糸纏わぬ愛香がいた。
「どうして?」
「私を抱いて下さい」
「何を馬鹿な事を」
離れようとする顕如に縋り付くように抱きつく愛香。
胸の膨らみが着物を通して顕如の肌に伝わっていく。
抱けるわけがない
それでも愛香の温もりをすぐに手放す事に躊躇していると柔らかな唇が触れてくる。
甘媚な刺激に男根は素直に熱く脈打つ。
一度は御仏に身を捧げた自分
俗世の煩悩を捨てた筈なのに甘い誘惑から逃れる事が出来ない。
誘うように差し込まれた舌を抗えずに絡ませて応えてしまう。
いけない事をしている
理性ではわかっているのに何故?
拒否出来ないのであろう?
「っ……」
愛香の細い指が男根に絡み付き、腰が甘く疼いてしまう。
「やめてくれ」
絞り出すように声をだすが、愛香は何もかも包み込むような柔らかな笑みを浮かべ顕如を見つめる。
「私を顕如さんで満たして……」
「無理というものだ」
俺の手は血で穢れている
そんな手で愛香を抱いてしまっては穢れてしまう。