第32章 光秀の愛のかたち/明智光秀&伊達政宗
「気持ちにけりはついたのかよ?」
静かな部屋に低い声が響き渡る
腕組みをして襖に寄りかかる政宗だ。
「大丈夫だろ?」
抱きついている愛香の身体を離し、褥から抜け出た光秀は着物を羽織って脇息にもたれかかった。
「あとは頼むぞ」
意味深な笑みを浮かべ、酒を煽りはじめる。
「俺としてはもう一度、愛香を抱きたいと思っていたから渡りに船だけどな」
布団を捲り、愛香の隣りに横たわる。
「……愛香」
あごを軽くつかみ、唇にゆっくりと触れてくる。
鋭い眼光の奥は熱を帯びており、愛香の全てを燃やしつくすかのよう
「今度は逃げるなよ?」
「っ……」
政宗の瞳から逃げる事が出来ない
覚悟を決めるように小さく息を吐くと
「私は政宗に溺れたりしないから」
「そうかよ……」
愉しげに口角を上げると、味わうように唇を重ねてくる。
久しぶりに味わう政宗の唇
かつては何度もこの唇に溺れていた自分が、懐かしく思ってしまう。
でも、今あるのは懐かしさだけ
あの時のように身が焦がれるような想いは
__無い。
大丈夫……
私は政宗に溺れたりしない