第31章 君は俺の薬/武田信玄(信玄side)
我ながらガキだな
隠れ家に戻った俺は、ふて寝の最中
まったくみっともない。
そんな俺の姿を見たくないのか?
佐助はすぐに何処かへと消えてしまっていた。
諦めようとすればするほど、胸が焦がれる。
俺に自信があれば奪いさるのだが__
それが出来ないから苦しい
「信玄様……?愛香です」
愛香?
どうして此処がわかったんだ?
一瞬、悩むがすぐに佐助の仕業と理解した。
彼は彼なりに俺に気遣ってくれたのだろう。
ありがたいと思うが正直、困った。
愛香の顔をひとたび見てしまえば、俺の我が儘な感情が勝ってしまうだろう。
寝たふりをしてやり過ごすか……
返事をしないが、愛香が静かに部屋に入ってくるのが分かった。
俺の傍に座り様子を伺っているのも気配でわかる。
手を伸ばせは、すぐに触れる事が出来る
触れてはいけない__
思ったくせに
何故、俺は我慢出来ない?
「やあ、久しぶりだね」
強引に腕を引き寄せ、自分の体の上に愛香を乗せてしまっていた。
駄目な大人だ、俺は……
理性では彼女の幸せのために諦めようとしているのに、感情がそれを許さない。
「信玄様……?」
「君に逢えて嬉しいよ」
愛香を一目見ただけで自然と顔がほころんでしまうとは……
素直すぎる感情に困ってしまうが……
「……信玄様、具合が悪いって聞いたんですけど。大丈夫ですか?」
「うん?……大丈夫だよ」
ふて寝をしている俺の事を具合が悪いと表現したのか。
「本当に?」
「ああ」
「うそ……ですよね?」
「困った子だね。俺の言葉を信用してくれないなんて」