第30章 君は俺の薬/武田信玄(夢主side)
佐助くんの話によると、敵情視察のため安土に来た信玄様と佐助くん。
来てしばらくは元気だった信玄様が、昨日から様子がおかしくなり寝てばかりいるらしい。
「愛香さんの顔を見たら元気になるかもしれない」
私の顔を見て元気になってくれるなら、いくらでも顔を見せても良い
あの方が、元気になってくれるならば
佐助くんは私に信玄様の居る所を教えてくれると、いつものように天井へと姿を消してしまった。
信玄様に逢いに行かなくっちゃ
一刻も早く信玄様に逢いたいと願う私の足取りは早足となり廊下を進んでいく。
「ん? 愛香……そんなに急いでどこに行くつもりだ?」
「秀吉さん……ちょっと城下まで」
「今からか?」
眉をひそめる秀吉さん
絶対に小言をいわれそう
「もうすぐ夕刻になるぞ?」
「早く帰ってくるから」
お願い
私を行かせてちょうだい。
真剣な私の気持ちが伝わったのか
「はぁー……ったく
夕餉までには戻ってこいよ」
ふんわりと笑うと頭を軽く撫でて外出を許可してくれる秀吉さん
「うん、早く戻ってくるから」
「知らない人についていくなよ?」
背中から聞こえる秀吉さんの声に複雑な笑みがこぼれてしまう。
相変わらず心配性なんだから
まるでお兄ちゃんみたい