第29章 本気で惚れてるからこそ/豊臣秀吉(秀吉side)
まったく光秀には参ってしまうが……
まあ、光秀の言う事も一理ある。
どうなるか分からないからこそ、今を大事にする__
頭では分かっているが、それでも決断出来ない。
気晴らしに書物を読んでみるが、まったく頭に入ってこない。
「何を読んでいるの?」
「ん? 別に」
愛香が戻って来たのも気付かないとは……
「ねっ……秀吉……」
「愛香……どうした?」
愛香の様子がおかしい。
なんだか思い詰めているように険しい表情
少しでも和らぐように頭を撫でるが、いつもと反応が違うな
そのうち俺を見つめて涙を流すとは
やはり、愛香も気にしているのか?
「ん……ひっく……」
「どうした? ん? 俺にちゃんと話してみろ」
泣いている愛香が愛おしくて、抱きしめてしまう。背中をさする手が他にも触れたくなる。
「理由もなく泣かれるのは……辛いな」
理由は十中八九__俺だろうな
俺がしっかりしないばかりに
「秀吉っ……」
「俺に言えない事か?」
「っ……」
「どうしたんだ?」
愛香の口から何を言われるのか
聞くのが怖い。
「……秀吉が……」
「俺が?」
「っ……わ、私に魅力がないから?!
それともっ! 『いんぽ』なの?!」
「……はあ?!」
ちょっと待て