第29章 本気で惚れてるからこそ/豊臣秀吉(秀吉side)
大事にしたいという想いが強すぎて簡単に抱けないでいる。
閨を共にし、眠りにつく前におでこに口付けを落とすだけでそれ以上に事を成すことはない。
それでも俺の腕の中ですやすやと安眠をむさぼる愛香の寝顔に欲情するのも事実だ。
そうなると……寝られるわけがない。
毎晩、悶々とし俺の意思に反して男根は元気になりやがる。
俺だって愛香を思いっきり愛したい。
が、本当に俺で良いのだろうか?
還る場所を捨て、俺と一緒にいる事を決意した愛香を幸せに出来るのか……
「まったく……お前の心配性には呆れるぞ」
「何がだ?」
「大方、お前の事だ
__いつ、どうなるか分からない自分が愛香を幸せに出来るのか悩んで、抱けない」
「っ……」
「まあ、そんなところか?」
核心をついたように笑うんじゃねーよ
こっちは真剣に悩んでるんだぞ
「秀吉……」
「な、なんだよ」
「先の事を考えてもキリがない。だったら今を大事にするべきじゃないのか?」
「……光秀」
「ん?なんだ?」
「お前……熱でもあるのか?」
光秀の額にふれるが……熱はないようだな
「お前がまともな事を言うとは……」
「ふっ……たまには、な?
まあ、面白おかしくしてやってもいいぞ」
「はあ?」
「三成!!」
「はい? お呼びでしょうか?」
隣りの部屋で仕事をしていた三成が顔をだした。
「秀吉に『初夜の進め方』という書物を渡してやってくれ」
「秀吉様に……ですか?」
「秀吉は未開通者とは経験もなく困っているようだ」
「光秀!!何を言ってるんだよ!!」
「それは大変ですね。書庫に行って探して来ます」
「ちょっ!三成っ 待て!!」