第21章 甘いお仕置き/織田信長 豊臣秀吉
「本当にごめんなさい!! わざとじゃないんです!!__つい、うっかりとポロッと手から滑り落ちゃったんです!!」
早口に事情を説明する愛香だが、信長と秀吉には何の事を言っているのかさっぱりと分からない。
「お前、何の話をしてるんだ?」
「へ?」
頭上から聞こえる秀吉の声があまりにも優しい響きだったので、つい顔を見つめてしまった。
「? だから、信長様から頂いた茶器を壊した件で呼ばれたんだよね?」
「はあ?」
「え?」
お互いに噛み合わない。
愛香は、茶器を割ってしまった件で信長と秀吉から怒られると思っていたのだが、どうやら違うようだ。
「お前っ……茶器って……あの茶器か?!」
「?!(うそん! バレてなかったの?!)」
慌てて手で口を抑えるものの、時すでに遅し。
「分かっているのか?! あの茶器は信長様が!!」
「ひいっ!……ごめんなさいっ」
「ほう……あの茶器を壊した__と」
地獄の底から聞こえてくるような信長の低い声に体が跳ね上がる。
怒っているよね?
信長様は絶対に怒っている!
お、終わった……私の人生が終わったよ
「仕置きだ」
怒っているはずの信長からは愉し気な笑みがこぼれ、それがいっそう愛香の恐怖心を煽っていく。
「愛香、お仕置きしてやるからな」
ポンッと愛香の頭に手を置く秀吉も何故か愉し気に微笑んでいる。
それどころか、艶っぽい笑みにさえ見えてしまう。
え?!
なんで?!
怒っているはずなのになんでそんなに愉しそうに笑うの?!
つか!
妙な色気を放っているのよ?!
果たして本当に2人は怒っているのであろうか?
それとも他の思惑があるのであろうか?