第21章 甘いお仕置き/織田信長 豊臣秀吉
天守閣に近づくにつれ、愛香の心臓の動きが早くなっていく。
今にでも口から心臓が出そうな勢いである。
「俺の命は信長様に捧げていますが、心は捧げるわけにはいきません」
「俺に勝てるつもりか?」
え?
秀吉さんと信長様?
はっきりと何を喋っているのか、愛香にはよく聞こえないが言い争っているようにも聞こえる。
恐る恐る覗くと信長に詰め寄っている秀吉の姿が目に映る。
険悪そうな雰囲気の中に入っていく度胸もない愛香は隅の方で立ち止まってしまう。
どうしよう?
やっぱり素直に謝って許してもらうしかないよね?
でも、待って!
信長様がちゃんと聞いてくれるかな?
問答無用って言ってバッサリと斬られたら……
「愛香、こっちに来いよ」
難しい顔をしていた秀吉だが、愛香の顔を見るなり表情を和らげ笑みさえ浮かべたが俯く愛香は気付くわけもない。
「……っ」
秀吉に声をかけられ、傍に行こうとするが足が竦んで動けないしイヤな汗が背中を流れていく。
「さっさと来い」
信長の低い声。
いつもならその声を聞くたびに胸がどきどきとするのだが、今は違う意味でドキドキとしてしまう。
拳を握り締め意を決した愛香は、体を半分に折る勢いで深々と頭を下げ
「茶器を割ってしまってごめんなさい!!」
「茶器……?」
言葉の意味が分からない男2人は、唖然として愛香を見つめてしまう。