第18章 ワカメ酒/上杉謙信陣営
「愛香さん、これを吞んでごらん」
「これは……?」
佐助が手渡してくれた盃には見慣れた色をした液体。そして、鼻に抜けてくる香り
「ワイン?」
「そう! 俺が作ったんだ」
「この時代でワインが呑めるなんて嬉しいっ。ありがとう、佐助くん」
顔をくしゃとして笑う愛香が、あまりにも可愛いくて、つい頭に触れてしまう。
冷静沈着が売りの佐助ではあるが、この時ばかりは顔もだらしなく緩んで愛香をみつめてしまっていた。
「あ! 美味そうな酒だな。俺にもくれよ」
「幸村も呑むのか?」
「いーじゃん。くれよ」
「佐助くん、幸にも呑ませてあげたら?
本当に美味しいよ」
本当に吞みたいわけじゃない。
ただ、2人の間を邪魔したいだけの幸村。
「愛香、ついでくれよ」
「はい、どうぞ」
「(なんか、良い雰囲気っぽいよな。もしかしたら愛香は、俺の事を?)」
「愛香さん、俺にもついでくれる?(幸村にだけ良い想いはさせないよ)」
「はい、佐助くんもどうぞ」
「(佐助のヤツ……邪魔するつもりだな)」
愛香を挟んで男2人が、火花を散らす。
それに全く気付かない愛香。
そんな3人のやり取りを黙って見ているのは大人2人組。
「(おままごとのようだな)」
「(所詮はガキだ
敵にすらならん。なるとすれば……)」
謙信の眼光が鋭く信玄を捉える。
「(この俺に挑むとは……伊達にいろんな女を知っているわけじゃないぞ)」
余裕の笑みで謙信を見返す。