第9章 私も行く
いつもは何かをしてあげる、もしくは何かをあげる側だったのだが、ホワイトデーということで、今日は貰ってばかりだ。
慣れない、といえば慣れないが、嫌な気分ではなく、寧ろ嬉しすぎて思わず顔が緩んでしまう。
なんだか今日はいいことばかり起こるな、なんて考えていると、SHRはあっという間に終わり、放課後だ。
さて部活へ行こう、と思い、鞄の中にノートなどを仕舞っていると、ふと鞄の中で携帯が光っているのが見えた。
見てみると、珍しくいつもならメールをよこす母からの不在着信。
「華澄、行かないのか?」
「ごめんなさい、先に行ってて。ママから電話掛かってたから掛け直してから行くわ」
「わかった」
征十郎に断りを入れ、私は母へ電話を掛け直す。
すると、1コールだけで母は出た。
「あ、ママ?電話なんて珍しいわね。何かあっ…」
「華澄」
これまで緩んでいた私の顔は一瞬で表情を失った。
手から携帯がすり抜け、ゴトンと音をたてて床に落ちた。
―――「伯父さん、別の病気を併発してしまったらしいの」