第3章 マネージャー志望
「ここは一軍の体育館みたいだね」
帝光中バスケ部は強豪校なだけあって、部員数は百人以上。実力順に一軍から三軍に振り分けられる。
「新入生か?」
体育館を覗いていた私たちの後ろから聞きなれた声がした。
振り返ると、そこには全く私とは似つかない、凶悪な顔をした従兄が立っていた。
「あ、修ちゃん」
「なんだ華澄かよ。こんなとこで何してんだ」
「マネージャー志望」
修ちゃん、基、虹村修造は私の一つ上の従兄。帝光中バスケ部の一軍で私は実際に試合とか見たことはないけど、かなり上手いらしい。
「華澄、彼は?」
「従兄の修ちゃ…じゃなくて虹村修造。二年生でここの一軍なの」
征十郎の問いにそう答えると、彼は修ちゃんの方を見た。
「初めまして、赤司征十郎です。バスケ部に入部希望なのですが」
「ああ、それなら。新入生は明後日クラス分けテストの予定だ。それまで自由に見学してけ。ちなみにマネージャーはあっち」
本当にできんのか、と言いたげな目をする修ちゃんをムッと睨んで、親指で指さす方を見ると、何名か女の子が集まっているのが見えた。
「どうもご丁寧にありがとうございます、虹村先輩。精一杯頑張らせいていただきますぅ」
「可愛くねーな」
嫌味っぽく、凶悪顔の従兄にそう告げて、私は女の子の集団のなかへ向かった。
「あの、マネージャー志望の方ですか?」
三軍の体育館なら体を動かす程度に使っていいと言われた征十郎は、私が先輩マネージャーからの説明を一通り聞いている間に行ってしまったらしい。
ひとりで一軍の練習を見ていた私に可愛らしい雰囲気の女の子が声をかけてきた。