第3章 マネージャー志望
「君はポケットに手を突っ込んだまま歩くんだね。危ないよ」
「あー、これ癖なの。気にしないで」
いつの間にか、常にポケットに手を突っ込む癖ができていた。
はじめこそ、お行儀が悪い、危ない、と注意されていたが、小学校を卒業するころには誰にも何も言われなくなった。
「何の部活に入るのか決めたのかい?」
ふと征十郎が私に尋ねた。
「まだ何も。私、運動が苦手で…。…あ、でも私、従兄がいるんだけど、その従兄が会うたびにいつも怪我してたからテーピングとか治療とかは得意なのよ?だからマネージャーやりたいな、と思ってて。外部は嫌だけど」
「そうか…。ならば、バスケ部はどうかな。俺も入部するし」
「バスケ部って…えっ?!ここ凄い強豪校でしょ?!む、無理よ」
ここ帝光中学校のバスケ部が強い、ということはスポーツに全く興味の欠片のない私でもよく知っていた。
私は両手を顔の前でブンブンと振り、拒否する。
「大丈夫だ、華澄ならできる。わからないことがあれば俺が教えるよ」
「えぇ、できないわよ…」
「できる」
何を根拠にそんなこと言えるのだろうか。
でも、彼に言われると何故だかできるように思えてしまう。さらに運良く、従兄のおかげで、バスケのルールを知らないわけではない。
「…やってみよう、かしら」
「よし、早速見学に行こう」
「え、ちょっと、征十郎!」
征十郎は私の手を引いて歩き始めた。