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青春あやまち論 【黒子のバスケ】

第8章 誰の顔も浮かんでこないわ



私は試合中スコアを書くために彼を見失わないよう意識するようにし始めたが、それでもやはり気づけば、影の薄い彼を見失ってしまう。

ましてまだ実戦での彼を見ていないさっちゃんは気づくに気づけない。さらにいまだ彼の一軍昇格を疑っているようだ。


「そ、そう。黒子君も一応一軍だしね…。どうぞ」

「ありがとうございます」


いくらなんでも一応、とつけるのは失礼ではないだろうか。とも思ったが、当の本人はさほど気にも留めていないようである。


「おら、早く練習いこうぜ」


大ちゃんが珍しくせかすので私たちは体育館へ向かった。





「藍ちーん。待ってたよー」


いつもギリギリにしか来ないはずのあっくんが既に体育館でストレッチを始めていて、私は思わず驚いた顔をする。

いや、驚いたのは私だけではないはずだ。

あっくんは私の姿を確認すると、いつものように抱き付いてくる。


「華澄、桃井。チョコを配るのは練習が終わってからにしろ。特に桃井」

「わかってる」

「うん?わかった」


征十郎の考えなどわかりきっている。

ここで配ればあっくんは間違いなくその場で食べてしまう。お預けにした方が、今日の朝練はやる気を出して頑張ることはわかりきっている。

さらに、もしあっくんがさっちゃんのチョコを食べてしまった場合、間違いなく再起不能になる。


「あっくん。朝練終わったらあげるから頑張ってね」

「うん!」


言うまでもないが、今日のあっくんはここ一番じゃないか、というほど機敏に動き、練習も普段以上にやる気いっぱいであった。


「ムッくん。いつもあんな風に頑張ればいいのに…」


隣で呟いたさっちゃんに同感した。

それより、今日はあっくんだけではなく先輩たちまでいつも以上に張り切っているように見えるのは気のせいだろうか…。

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