第3章 マネージャー志望
「えー。早速だが、クラス委員を今日のうちに決めておきたいと思う。誰か立候補はいるか」
いるわけないでしょ。んな面倒なこと頼まれたって誰もやりたがるわけがない。
「はい」
……い、いた!
声のする方を見れば、隣の席の代表挨拶をした彼が、真っ直ぐに手を挙げていた。
ふーん。代表挨拶までして、クラス委員もやるって、今どきこんな真面目ちゃんもいるのね、感心するわ。私はやらないけど。
そんなことを思いながら頬杖をついて横目で彼を見た。
「では、男子は赤司で決まりだな。あとは女子だが…、立候補いないか」
だから、いるわけないって。指名だとしてしても出席番号順とか勘弁してよね。私がなっちゃうから。誰か隣の彼を見習って真面目ちゃんが手を挙げなさいよ。
「うーん、いないようだな。じゃあ悪いが、藍川。頼んでいいか」
「はい?!」
「よし決定だ」
いや、待って。今の「はい」は”Yes”じゃなくて”What”の「はい」なんだけど。
「では、クラス委員の二人はこの後、名簿作成を頼む。ほかは解散だ。あ、それと今日は入学式だったが、部活見学も今日から可能だ」
ではまた明日、なんて担任が言うから、周りがざわざわし始め、各々帰宅の準備を始めた。
「赤司、藍川。これに名簿作成を頼む。できたら職員室まで持ってきてくれ」
ちょ、ちょっと、勘弁してよ。別にこの後たいして用事があるわけじゃないんだけど、私だってはやく帰りたい。
「じゃあ早速やろっか、藍川さん」
私に笑いかけながら赤司君は、自分の机を私の机と向かい合わすようにくっつける。
この時、私は『藍川』という名字を心底恨んだ。