第27章 逃げない
翌日もその翌日も、私は毎日のように進路指導室へ呼び出しを食らった。
その度に私は先生に頭を下げ、「今月中には決める」と言って出て行く。
そんな毎日の繰り返しだ。
「あーいちーんー」
久しぶりに聞く、間の伸びた声。
「あっくん…」
彼にしては珍しく駆け寄ってくる。
去年の秋の征十郎との一件以来、彼が自分から私に話しかけることなどなく、正直、ギョッとした。
「どうしたの?」
私が問いかけると、あっくんは少しだけ微笑んで、背中に隠した何かを私に見せてくる。
「じゃーん。俺、陽泉に決まったんだー」
あっくんが見せてきたのは、推薦の合格通知。
学校名は「陽泉高校」と書かれている。
「陽泉って…秋田の?凄いじゃない、おめでとう」
私は笑顔を張り付け、あっくんを見た。
すると、あっくんは顔を赤らめて少し視線を逸らして言った。
「それでさ…藍ちん、まだ高校決めてないでしょー?良かったら俺と…」
「華澄」
あっくんが何か言いかけた時、あっくんと向き合っていた私の後ろから誰かが呼ぶ。
この声は…。