第27章 逃げない
逃げ…。
『そろそろいーかー?俺腹減ったわ』
「あ、うん。朝早くからごめんね?」
『今に始まったこっちゃねーよ。じゃーな、お休み』
「うん。修ちゃんも学校行ってらっしゃい」
電話を切って、私は天井を見上げた。
私の理想の進学先は、修ちゃんのいるアメリカ。
そこへ行けば、全て忘れることができる。
優しい修ちゃんもいるし、『キセキの世代』の彼らと顔を合わせることもなくなる。
まさに理想だ。
だけど、それを修ちゃんは”逃げ”だという。
修ちゃんの言っていることは間違ってない。
その通りだ。
…私は逃げていいの?
彼らをあんな風にしたのは私なのに?
修ちゃんはきっと私に逃げずに、立ち向かって欲しいのだろう。
「…どうしたらいいの?」
私は目を閉じて、額の傷跡をそっと撫でた。