第6章 本当に彼でいいの?
「…本当に彼でいいの?」
テストは見た。彼のバスケも認めている。確かに凄いと思ったし、こんなバスケを見出せなかった私もまだまだだと痛感した。
だが、今日の練習を見ていると、六人目としてパスしか才能がない彼で大丈夫なのだろうか。不安しかない。
「彼だからいいのさ」
征十郎はハッキリと言った。いつもの自信のあるような口調で。
「まあ、これも彼次第なんだけどね。確かに受け取ったよ、黒子君に渡しておこう。…ところで華澄」
真剣な口調で話す征十郎の言葉を聞きながら、よろよろと危ない足取りで帰っていくテツ君の後姿が目に入り、明日は練習前に体調と転んで怪我などしていないかチェックしなければ、と考えていると、突然彼の口調は変わり、私は視線を征十郎に戻した。
「片づけはもう終わるのかい?家まで送るよ」
「あー、今日は修ちゃんと帰るの」
「主将と?」
征十郎は少し不機嫌な表情をして私を見た。
「修ちゃんの弟と妹を今日家で預かってたみたいだから、その迎えついでに」
伯母さんが今日は仕事で帰るのが遅いらしく、まだ小さい従弟たちを家で預かっている。それで、修ちゃんは学校の帰りに私の家に寄って彼らを連れて帰るのだから、どうせなら一緒に帰るように昨日母に言われていたのだ。
ちなみに、入院中の伯父さんの容体は今のところ回復に向かっている。
「そうだったんだね。では、明日送るよ」
「いつもありがとう。お疲れ様」
「お疲れ」
そう言って征十郎は帰っていった。
さてと、私も修ちゃんを待たせてはいけないから早く片付けないと。