第27章 逃げない
その後、私たちは九月の選抜を終えてからバスケ部を引退した。
テツ君は、その前の全中終了と同時に完全にバスケを辞めてしまった。
「…華澄、また痩せた?」
屋上で優ちゃんと二人でお昼ご飯を食べていたところ、心配そうに彼女は私の顔を覗き込んでくる。
「少し、だけよ…」
「そっか…」
全中決勝のあの悲惨すぎる出来事は、流石に優ちゃんには話せなかった。
いや、話す気力すらなかったのだ。
引退してから、また笑わなくなってしまった私を優ちゃんは心配してくれたが、おそらく、あの出来事をまた人づてに聞いたのだろう。
何も聞いてこなかった。
「そうだ!華澄はどこに進学するか決めた?」
優ちゃんは少しでも話題を逸らそうと、私に問いかけてくる。
「…まだよ。優ちゃんはもう決めたの?」
「うーん…、なんとなーくだけど。都内の高校に行こうと思ってるんだ」
「そう…。私も、優ちゃんと同じとこに行こうかしら…」
「高校まで華澄と同じだと、絶対楽しいじゃん!」
優ちゃんは私を元気づけようと、いつも笑ってくれる。
「…マネージャーはもういいの?」
遠慮がちに優ちゃんは尋ねてきた。
できることなら聞きたくなかったんだろうが、やはり気になったんだろうな…と感じ取った。
「うん…。もうバスケには関わりたくない…のよ…」
「……」
あんな思いをするくらいならば、もう二度と、バスケには関わりたくない。