第26章 色を失ってゆく
征十郎が荻原君の伝言を伝えると、テツ君は大人しくなり、目線を少し下げた。
「そう…ですか…」
「征十郎、もう時間だわ」
私が言うと、征十郎はチラリと時計を見て、立ち上がる。
「…赤司君」
立ち上がった征十郎をテツ君は呼び止めた。
「なんだ?」
「決勝は…本気でやってください。お願いします」
その必死そうなテツ君の表情に、私は目を少しだけ伏せてしまった。
彼は…まだ、諦めていないのだろうか。
もう手遅れなのに…。
テツ君…あなただって気づいていないだけで、もう皆と同じ目をしているのよ…?
「…いいのか?どんな点差になっても」
「…はい。手を抜かれる方がもっと嫌だ。彼なら…そう言うはずですから」
それでもテツ君は…まだ温かさが残ってるのね…。
そんなテツ君の目を見て、私は自分の中にまだかろうじて残っている感情が疼く。
「わかった。思い知らせてやろう、帝光の力を。行くぞ、華澄」
私は征十郎に言われ、彼と一緒に医務室を出た。