第26章 色を失ってゆく
「脳震盪ね。残念だけど決勝は欠場で絶対安静よ」
試合終了後、テツ君の運ばれた医務室へ行くと、養護係のスタッフにそう告げられる。
「あれだけ思いっきり殴られたんですもの、仕方ないですね」
「?あなた、どうしてそんなに平然としていられるの?」
私の反応を見て不思議に思ったのか、彼女はそう言う。
「失礼ですね。これでも心配していますよ」
「そう…ならいいんだけど。とりあえず、あなたが見ていれば問題ないわよね?」
「…どういう意味でしょうか?」
「だってあなた、帝光の藍川華澄さんでしょ?」
それだけ言うと、彼女は医務室を出て行ってしまった。
「あはは…カスミン有名人だね」
テツ君が運ばれた時から付き添っていたさっちゃんが、ベッドの横の椅子に座ったまま言う。
「ただの職務放棄じゃない」
いくら全国的に有名なマネージャーだろうが、怪我人を見ることに慣れてようが、私だってただの中学生だ。