第26章 色を失ってゆく
『198-8』
得点板に出されたスコアは、今まででも見たことのないような数字。
全力の結果がこれよ。
ね?もう全力も本気もいらないのよ…。
「はい、一回戦はやってなかったみたいだったけど、一応つけておいたわよ。こっちが二回戦の分」
今日のリーグ戦を難なく通過し、明日からは決勝トーナメントが始まる。
ミーティングの前に私は征十郎に個人得点表を渡す。
その中には、征十郎、真ちゃん、大ちゃん、あっくん、黄瀬の五人の名前と各自の得点。
「ありがとう」
「お!流石は華澄!やるじゃねーか」
私が罪の塊をも言えるような二枚の紙きれを渡せば、皆は喜んでそれを受け取る。
「もう二度と本気なんて出さないでちょうだい。前に言ったでしょう?」
「ごめーん。監督がああ言うからさー。もう出さないしー」
「出す必要もないって感じッスよね!」
「ふん、勝手にしろ」
何よ…真ちゃんだって、何だかんだ言って私が渡したその紙切れに興味津々じゃない。
「カスミン…いいの…?」
私の行いにさっちゃんは戸惑ったような顔で言った。
「これが正しいんじゃないの?私は受け入れるだけよ」
「……」
さっちゃん。
少し前なら、あなたと同じ表情をして同じ悩みを共有できたのかもしれないわね…。
でもね?
もう今の私にはできないわ。
私は…もう皆がどんなバスケをしていたのかも、思い出せないの…。