第26章 色を失ってゆく
全中本選が始まった。
「よく聞け。この試合だけは何があっても全力でやるんだ。大事な初戦だ、万が一にも足をすくわれるわけにはいかん」
監督がベンチに座る皆に告げた。
相変わらず帝光のジャージを羽織った私は、表情もなく、ただそれを見ていた。
「わかりました。皆もいいな」
征十郎は監督の言葉に、少し面倒くさそうな顔を見せて答えた。
「行こうか」
「うーす」
本気?
そんなもの必要なの?
全中といえども決勝ですら相手にならないかもしれないのに?
監督に言われたスタメンの皆は面倒くさげに、試合を進め、得点を重ねていく。
私はそれをただスコアに記録していくだけだった。
フォームや重心の崩れ、怪我の未然防止…そんなものを細かく見るは、もう必要なかった。
「ありゃ…ちょっと本気でやりすぎちゃったッスかね?」
「ねー」
「やっぱ話になんねーなー。次からまたあれやるか」
「…ふん!」
「行くぞ、整列だ」