第26章 色を失ってゆく
「華澄」
一人スタスタと歩いていた私の元へ征十郎が並んで歩く。
「何を怒る必要がある。大輝の言う通りだろう」
「…本当にそれが正しいと思っているの?」
「試合には勝った。つまりは正しかった、ということじゃないか」
征十郎の言葉に、私は立ち止まった。
「(…ああ、そうか。勝ったのならいいのか)」
この世の中は…勝者の言うことが全てだ、と以前彼は言っていた。
「これも認めろ、というの?」
感情のない、無表情で私は征十郎を見た。
彼の瞳に、人形のような私の顔が映し出される。
「認めるかどうかはお前次第だ」
私は、こんなふざけた真似をする彼らをも受け入れなければならないのか。
ああ、まただ。
私の世界は…
――― 色を失ってゆく。