第26章 色を失ってゆく
私はポケットの中で手を握り締め、さらに唇を強く噛んだ。
「だから、あんなふざけた遊び誰が言い出した、って聞いてんだよ!!」
順応するとは決めた。
受け入れるとも決めた。
だけど、これだけは認められるわけがない。
あんたたちにスポーツマンシップってものはないの?!
私が珍しくも怒ったことによって、黄瀬だけじゃなく、全員が立ち止まってこちらを見る。
「何怒ってんだよ。さっきも言っただろ、雑魚相手にやる気出すためだって」
「私の質問に答えろ」
大ちゃんはあたかも当たり前だ、とでも言いたげに言うが、私が睨みながら言ったことでフイっと目を逸らした。
「黄瀬なのだよ」
「ちょっ…緑間っち?!」
真ちゃんが答え、私は目の前の黄瀬を睨みつける。
「お前か」
「あ、いや…。でも皆やる気出してたじゃないッスか!結果オーライってことで…」
何が結果オーライだ。
いい加減に…。
「次舐めた真似してみろ、ただじゃおかない。私はいつでもお前の選手生命くらい潰せんだよ…よく覚えておけ」
それだけ言って私は、また前を向いて歩き出した。
「おーおー、流石は虹村さんの従妹。怒ると怖ぇな」
「美人が怒ると迫力が違うよねー」
「ってか、緑間っち!何で言っちゃうんスか?!俺だけ怒られたッス!」
「ふん、事実を言ったまでのことだ」
後ろから聞こえてくる会話。
何の反省の色も見えない。
…悔しい。
受け入れるとは決めたけど、こんな事って…。