第25章 行ってらっしゃい
「…あら、優ちゃん」
「同じクラスだよ!一年間、よろしくね!」
「うん。こちらこそ」
去年の帝光祭で仲良くなった、優ちゃん。
彼女も実は成績上位者だったらしく、特進クラスに割り振られていた。
「…あれ?華澄…なんか痩せた?」
私の顔をまじまじと見て、優ちゃんは心配そうに言う。
「…痩せたと言っても少しだけよ?心配ないわ」
「そう…?」
優ちゃんの言う通りだ。
去年の秋から食事が喉を通らなくなり、眠りも浅くなった。
修ちゃんがアメリカへ立ってからは特に。
おかげでこの半年間で体重は激減。
母にも拒食症なのではないか、と散々心配された。
「華澄が大丈夫ならいいけど、何かあったらいつでも相談してよね?」
「ありがとう」
屈託のない笑顔を見せる優ちゃんに、これ以上余計な心配を掛けたくなくて、私は無理に笑顔を張り付けた。
…ああ、こんなにも笑うというのは疲れるものなのか。
前はもっと自然に笑っていたはずなのに。
久しぶりに使った頬の筋肉が少し痙攣したのが自分でもわかった。
「そうだ!今日、バスケ部って部活ある?」
優ちゃんは何か思いついたように問いかけてきた。
「今日は休みよ。どうして?」
「一緒に帰ろうよ!ついでに寄り道もしてさ!」
暫く修ちゃん以外の人と一緒に帰ることも、誰かと寄り道することもなかった私は、戸惑いながらもそれを承諾した。