第6章 本当に彼でいいの?
…凄く気になる。
しかし、私が付いていきたいと言ったところで許してくれるような人たちではない。特に修ちゃんは。
「よし」
私は向かいの扉の前に立つさっちゃんの元へ歩きはじめる。だって、気になって練習どころじゃないんだもの。
「さっちゃん」
「カスミン。コーチや主将どこに行っちゃったの?赤司君もいないし」
「二軍の練習を見てくるらしいわ。それと…」
「?」
「少しの間抜けていいかしら?トイレに行きたいの」
「うん、いいよ。いってらっしゃい」
ごめん、さっちゃん。トイレなんて嘘なの。
だけど、見てみたい。私も真ちゃんも修ちゃんも、ついでに祥ちゃんも「ない」と言った彼が一体どんなことをするのか。
私は、一軍の体育館を出ると、今日は合同練習をしているという二軍の体育館へ急いだ。
「もう始まったかしら」
体育館の下窓から征十郎たちにばれないようにこっそり覗き込んだ。
ゲームはちょうど今始まったようだった。
「っ!」
パスが曲がった?!いや、違う?
黒子君が自分の影の薄さを利用してパスの中継役に回っている。元々影が薄いから、周囲にはパスが曲がったように見えるんだわ。
こ、こんなバスケもアリなんだ…。いや、アリなの?
そして、そのまま黒子君のいる三軍は二軍をおし続け、とうとう勝ってしまった。
「勝っちゃった…」
…ふーん。征十郎もなかなか面白い人を見つけてきたわ。
結局彼の目に狂いはなかった、ということなのね。
きっと彼は、六人目としてすぐにでも一軍に上がってくるんだろう。
「私もまだまだね」
今まであんな失礼なこと思っててごめんなさい、と心の中で呟いて私は一軍の体育館へ戻った。