第6章 本当に彼でいいの?
私は体育館の入り口に立ち、今日の不調者は特になし。とノートに書き込み、練習の様子を細かく記録していた。
入り口付近に立っているのは、何かと逃げ出そうとする祥ちゃんへの対策だ(修ちゃん思案)。私と向かい側の入り口には、今日一軍担当のさっちゃんが立っている。
「あの、すみません。赤司君いますか?」
後ろに何の気配も感じないのに突然声が聞こえ、ふと振り向くと、いるかいないかもわからないような男の子がひとり立っていた。
「ひぃっ!だ、誰?!…あれ?あなた確か…」
見たことある。誰だっけ、誰だっけ…、
あ。黒子君だ、黒子テツヤ君!
「って、え?せ、征十郎?」
黒子君はコクリ、と頷いた。
えぇー、何々?何か新しい技でも身に付けてきました、てこと?
…嘘でしょ?
数か月前と何ら変化ないんですけど…まあ、いいや。
「征十郎ー!お客さんよ」
私が呼ぶと、こちらに気づいた征十郎はフッと笑った。
「…やあ、黒子君。待っていたよ」
よくわかんないけど、とりあえず黒子君を体育館に通した。
そして、私は練習様子の記録をするフリをして二人の会話に耳を傾けた。
「三か月ぶりだね。答えは出たかい?」
「はい」
「では…」
「あの…一つお願いがあるんですが」
…お願い?は?というより何の答え?
「可能ならば…試合形式で見てもらえないでしょうか」
はあぁぁあ?!
「わかった。聞いてみよう」
そう彼に言って征十郎は修ちゃんの元へ向かっていった。
ここからだと全く二人の会話は聞こえないが、修ちゃんが「まじで?」といった顔で黒子君を見ているのだけはわかった。
「華澄、俺らちょっくら二軍の練習見てくるから」
「あ、うん」
修ちゃんに少しの間頼むとでもいうかのように言い渡され、修ちゃん、征十郎、コーチ、そして黒子君が体育館を出ていった。