第25章 行ってらっしゃい
何の感情も抱いていないと、本当に月日が流れるのは早いもので、あっという間に修ちゃんは卒業を迎えてしまった。
「お前ら元気でなー」
卒業式後、お世話になった先輩方には挨拶だけでもしなければいけない。
征十郎がそう言ったこともあって、今日は久しぶりに部員全員が集まるはずだったが、大ちゃんとあっくんは来なかった。
それでも修ちゃんは以前と何も変わらない様子で、真ちゃんやテツ君の頭を卒業証書の入った筒でポカポカ叩いていた。
それだけを見ていると、何も変わっていないような気がして、私は少しだけ笑ってしまった。
「藍川っち、寂しくなるッスね」
一人でその様子を眺めていた私の元へ、黄瀬がきてそんなことを言う。
ああ、こいつとも話すのは何だか久しぶりだわ。
部活にも来ないしクラスも違うから。
「…そうね」
「そう言えばずっと気になってたんスけど、虹村さんと藍川っちって付き合ってたんスか?」
「何を言ってるの。そんなわけないでしょう」
「え?!だって一緒に帰ったり、朝も一緒に登校してたじゃないッスか!」
部活には来ていないくせに、そんなとこは見ていたらしい黄瀬は好奇心の塊のように聞いてくる。
「それは修ちゃんが私の家に住んでたからよ。今、修ちゃんの家族皆アメリカなのよ」
「まじッスか?知らなかったー」
そして、すぐに修ちゃんもアメリカへ立ってしまう。