第25章 行ってらっしゃい
「あら、華澄。もういいの?」
「食欲がないの…。ごめんなさい」
夕飯時、私は毎日のように母に謝るようになった。
理由は食事を残してしまうから。
「……」
私の隣で黙々と食べる修ちゃんも、はじめの頃こそ無理してでも食べろ、と注意していたが、最近は何も言わない。
「華澄、お前今でも赤司が好きか?」
夕飯を終え、修ちゃんは部屋でゆっくりしていた私の元へやってきてはいきなりそんなことを言いだす。
「どうしたの…急に」
「いーから」
「……」
私は読んでいた本を閉じ、少し俯いて答えた。
「好きよ…多分、今でも。側にいなきゃって思ってる。そのためにマネージャーを続けてるし、征十郎の言うことに逆らいもせずに従ってるわ。…だけど、前の方が好き…かしら」
私が答えると、修ちゃんは複雑そうな顔をして私を見る。
「…お前がそれでもいんなら、俺は何も言わねーよ」
それだけ言って修ちゃんは私の部屋を出て行った。
パタンと閉まったドアの外で、修ちゃんは私に聞こえない声で小さく呟いていた。
「…赤司はホント、今のお前のこと何だと思ってんだろな」
そう言いながら修ちゃんは昼休みのことを思い出していた。
昼間、偶々征十郎を見つけた修ちゃんは彼を呼び止め、「華澄のことを何だと思ってんだ」「あいつを何回泣かせりゃ気がすむんだ」と問い詰めた。
すると征十郎から返ってきた答えは、「僕にとって彼女はただの道具に過ぎない」だった。
私は、そんなこと知るはずもない。