第25章 行ってらっしゃい
私は声のする方へ向かうと、そこには征十郎の胸倉をつかみ尋常じゃないほど怒った顔の修ちゃん。
「…修ちゃん?!な、何やっているの?!止めてっ!」
私は慌てて、修ちゃんと征十郎の元へ駆け寄り、修ちゃんの手を征十郎から離した。
修ちゃんはバツの悪い顔をして、私と目を合わせようとはしない。
「何があったの…?…説明してちょうだい」
「何でもない。行くぞ、華澄」
「え?ちょっ…ちょっと、征十郎?」
征十郎は少しだけ不機嫌な顔をして私に一瞥くれると、歩き出そうとし、私もそれに続こうとした。
「赤司」
そんな征十郎を修ちゃんは呼び止める。
征十郎は振り向きもせずに、その場に立ち止まった。
「俺にとって華澄は妹も同然の大事な従妹だ。次泣かしたら、いくらお前でもただじゃおかねーぞ」
「肝に銘じておきます」
それだけ言うと、征十郎はまた歩き始めた。
「(…何があったの?あの修ちゃんが征十郎を本気で怒るなんて…)」
だが、私がいくら聞いても征十郎は答えてくれなかった。
私は。
この時征十郎が修ちゃんに何を言ったのか、何も知らなかった。