第6章 本当に彼でいいの?
黒子君の存在を知ってから三か月が経った。
当の私はそんなことも忘れて、これまでと変わらない普段通りの生活を送っていた。
だが、その日は来た。
「あっくん。体育館でお菓子食べちゃダメって言ってるでしょ」
「えー、食べてないよー」
「じゃあこれは何?」
「あ」
体育館の端に置いてあった食べかけのお菓子。
ばれないとでも思ったのだろうか、一応タオルをかけて隠していた。
しかし、マネージャーの私が散らばったタオルを畳んだり回収していると、このお菓子が発掘されたのだ。
「はぁ、紫原。あれほどダメだと言っただろう。華澄、没収しておけ」
「赤ちん、それはないわー」
「こっちのセリフだ」
発掘されたお菓子をマネージャーの道具の入ったボックスの中に閉まっていると、征十郎に怒られたであろうあっくんが私の元へやってきて、甘えるように私の頭の上に顎をのせ抱き付いてきた。
「藍ちーん。本当にダメー?」
「なっ、紫原。いい加減にするのだよ」
「ミドチンには聞いてねーし」
「ダメなものはダメよ。あと重い」
「えー」
大体、ここでお菓子を返したりしたら、私が征十郎に怒られちゃうじゃない。
「…もう。あっくん、今お菓子我慢したら、これを倍にして返すから。我慢してちょうだい」
「まじ?俺我慢するー」
そう言って上機嫌となった彼は大きな体でスキップのような足取りでコートへ戻っていった。
「藍川、あやつをあまり甘やかしてはいけないのだよ」
「ああするしか他に方法ないでしょ」
確かに、といいつつ真ちゃんもまたコートの中に戻っていった。