第5章 「怖い」と感じた
翌日から私は休み時間や部活の合間を利用して彼を観察した。
名前は、黒子テツヤ君。
彼はD組らしい。征十郎曰く、スポーツIQは高いらしいのだが、勉強の方は特別いいわけわけでもなく、まして悪いわけでもない。
そして何より、影が薄い。というより、薄いなんてものじゃない。いくら探しても見当たらないし、見つけたとしてもすぐに見失ってしまう。
とりあえずわかったことはこのくらいだ。
しかし、この彼の観察も三日で辞めた。
理由は、簡単。彼に何の可能性も感じなかったからだ。
私もバスケに関わって日は浅いが、可能性を秘めている人とそうでない人くらい見分けられる。二軍や三軍を覗いても、「この人は伸びるな」「あの人は降格かな」となんとなくだがわかる。
そして、例の黒子君。彼は、運動神経の悪い私が言っちゃ悪いが、素人に毛が生えた程度だ。
そういった意味でも彼をこれ以上観察するのは無駄な気がした。
「…というわけなんだけど、どう思う?」
「俺が知るかよ」
観察を辞めた翌日の昼休み。
私は修ちゃんと何故か祥ちゃんと一緒に屋上でお昼をとっていた。
「素人の私が見たからなのかしら。祥ちゃんも部活サボるついでに見てみてよ」
「面倒くせーな。華澄が見て可能性の欠片も感じなかったんだろ。んじゃダメだろ」
祥ちゃんまでこう言い出す始末。
「何サボる前提で話してんだ。俺が許すわけねーだろ」
「なんで俺が殴られんだよ!」
修ちゃんは祥ちゃんの頭をいつもの如く豪快に殴った。
「その、なんだ、黒子?ってやつについては俺も赤司から話は聞いちゃいるが、華澄の話を聞く限り無理だろうな」
「やっぱり征十郎の見込み違いかぁ」