第5章 「怖い」と感じた
「だがやはり俺にはとても信じられん。本気であんな奴が化けると思っているのか?」
「同感。私から見ても彼は三流どころかそれ以下に見えたわ」
私たちが口々に言っていると、征十郎の口角が少し上がり、さあね、と呟いた。
「可能性は感じたが、会ったばかりの他人だ。友人などではない。あれこれ世話する義理はないね」
「……」
「征十郎ってそういうところ本当ドライよね」
「ふん。俺は糸を垂らしただけだよ。それを登ってこれるかどうかは彼次第さ」
そういった征十郎の顔はあまりにも冷たく、私は一瞬、彼を「怖い」と感じた。
そして、そのまま私は二人に家まで送ってもらい、帰宅した。
家についてから、自室に入りベッドにダイブして考えた。
名前も知らない彼は一体何者なのか。本当にこれからあんなのがどう化けるのか。
そして、どうして征十郎はあんな冷たい目をしていたのだろうか。
いくら考えたところで何もわからない。
「私もまだまだ、ってことなのかしら…」
階段の下から母が夕飯だと私を呼ぶ声がしたので、一旦考えるのを止め、着替えはじめた。